気分が落ち込んでいるのだが
何故か妙に心の中に苛立ちを感じるときがある。
そんな時に、穏やかな気持ちにさせるのに
一つの儀式がある。
それは刃物を研ぐと言うこと・・・
風呂に入って体を清め、日頃から体の中に沈殿している酒を抜き、
まず砥石を平らに保つ研ぎをからはじめる。
今日研いだのは日頃からお世話になっている
彫刻刀
ルーペで刃先を確認して刀を選び出す。
36本の彫刻刀が研ぎを待っていた。
ほぼ一日かかって研ぎあげた。
この刀はボクが一番気に入っている。
しかも一番値段が高い、刀は300本くらい持っているが
彫る場所によって刀を変えるのだが
何故かこの4本はボクのそばにいる。
一本が平均4000円〜6000円もする刀の中でも
飛び抜けてダントツに最高級な値段だった。
印刀以外は特殊な使い方をする。
入り隅や底辺を平らに仕上げるときに
使っている。
この表札を彫り終えること。
どっぷり浸ってまもなく10年が経とうとしている。
初期の彫刻刀は使う機会が無くなってしまったが
捨てずにしまってある。
物好きが木彫をやりたいと言ってきたときに
進呈しているから随分少なくはなった。
彫刻刀に整列してもらった。
イライラする気持ちは失せていた。
剃刀よりも鋭い切れ味の彫刻刀に変身していくとき
ボクの気持ちも浄化されて穏やかになっていくのが
よく分かる。
切れ味の良い刀で、大好きな材と向き合うとき
時間の経過は頭の中から消え去っている。
今日・明日は雨だし出かける予定もない
しばし至福の時間に没頭できそうだ。